エドマンド・バーク『フランスの国情についての考察』より「フリーメイソンとイルミナティ」

見出し画像

こんにちは。いつもお越しくださる方も、初めての方もご訪問ありがとうございます。

今回はエドマンド・バーク『フランスの国情についての考察』からの引用とそれについての個人的な考えをお話ししたいと思います。記事中には私個人の偏見や認識の誤りも含まれていると思います。その点のご理解のほど、よろしくお願いいたします。

学問・思想・宗教などについて触れていても、私自身がそれらを正しいと考えているわけではありません。

 

 

引用文

七年戦争ザクセン人の心に或る種の変化を生んだが、これまで彼ら民衆が実質上ポーランドの王位継承権に等しいと考えられていた既得権の喪失を悔やむことはなかったと私は確信する。なぜならばこの継承権の保有は彼らを外国の利益へ結合することによって往々彼らに、この権益の擁護のための過大な役割を強制したにもかかわらず、肝心のこの外国権益はそれに見合う国力の増進に必ずしも繋がらなかったからである。フランスとドイツの経済学者の思弁やIlluminateorden(啓蒙教団)やフリーメイソンの徒党とその公然もしくは秘密の教義は彼らの政治利害をめぐるこの極めて微妙な状況下でこの国内でも著しい進展を遂げ、宗教なる体裁を取るものの実質的にはフランス流の人権の観念にもとづく騒々しい精神がすでに姿を現して、あらゆる機会を把えて燃えさかろうとしている。
現在の選帝侯は安全かつ温和な性質と充分な慎慮と善意の持主であるゆえに、現在のような状況下では首長らが当然持つべき権力や威令どころか、彼らの存在自体が辛うじて合理的な節約に懸かっていることを弁えている。貧窮と支払い不能の状態にあってはヨーロッパはどの君主といえども彼らの権勢の存続を約束などできないし、自己の財政立て直しのための新しい課税に踏み切ったりはしない。

 

『バーク政治経済論集』p714

 

神聖ローマ皇帝はこの悲劇的な手本から何かを学ぶところがあってよさそうに思われる。しかし彼の周囲には彼の義弟に現在の惨状を招いたのと同じ考えを彼の心に吹き込むのに躍起な廷臣がいることは確実である。現にヨーゼフ2世はすっかりこの種の哲学にかぶれて、皇帝側近の全部でないまでも一部の者はこのフリーメイソン団のすべての秘儀を彼に手ほどきしようと意気込んでいる。彼らは皇帝にフランス国民議会を敵手の憎悪で眺めるのでなく競争者の嫉妬で眺めるように説得している。つまり彼らは彼が自国の領内で自らの専制によって、フランスで民主派が実現した事業を行うように仕向けている。

 

『バーク政治経済論集』p728

 

感想

イルミナティについては以前に『フランス革命省察』でバークが批判的に論じていたことを指摘しました。今回は別の著作である『フランスの国情についての考察』を取り上げました。イルミナティについて言及している箇所は1か所、フリーメイソンに言及しているのは2か所で、フランス革命ジャコバン主義者やジロンド派の背後にいるものとしてイルミナティフリーメイソンの存在を示唆しています。

ここではフリーメイソンイルミナティといった秘密結社についてのみ言及していますが、Twitterで二人目の方がおっしゃっているように、バークはフランス革命の背後にユダヤ人勢力がいることも示唆的に論じています。これは『フランス革命省察』から一貫して見られるものです。

エドマンド・バークは保守思想の祖として扱われることが多く、欧米の保守思想家は基本的にエドマンド・バークの言説を元に保守思想を論じることが多いです。そこから後世の思想家などが入ってくると、少しずつ何が保守的であるのか、あるいは何がバーク的であるのかがぼやけていきます。

バークの保守思想の最も根幹となる部分はキリスト教にあるわけでもなく、経済論にあるわけでもなく、ジャコバン派批判にあります。そしてそのジャコバン派の正体をバークはフランス革命期に明らかにしていき、その一つに秘密結社に警笛を鳴らしていたことが論じられる必要があります。

現在まで続く陰謀論の最も原初的な言論は、実は西欧保守思想の祖とさえるバークがその一人だったという点は強調して、し過ぎることはないでしょう。

そして現在、保守と目されるアメリカの新保守主義新自由主義といったものこそが、エドマンド・バークが批判したフリーメイソン結社によるジャコバン主義的な運動であったということも付け加える必要があるでしょう。もちろん共産主義やリベラル思想も同じです。

関連記事

エドマンド・バーク『フランス革命の省察』より「イルミナティについての言及」 - 幻想の近現代

エドマンド・バーク『フランスの国情についての考察』より「フリーメイソンとイルミナティ」 - 幻想の近現代

エドマンド・バーク『フランス国王弑逆の総裁政府との講和商議についての一下院議員への手紙』より - 幻想の近現代

最後に

最後までお付き合いいただきありがとうございました。もし記事を読んで面白かったなと思った方はスキをクリックしていただけますと励みになります。

今度も引き続き読んでみたいなと感じましたらフォローも是非お願いします。何かご感想・ご要望などありましたら気軽にコメントお願いいたします。

Twitterの方も興味がありましたら覗いてみてください。

今回はここまでになります。それではまたのご訪問をお待ちしております。