各政党と研究会の憲法改正諸案—―日本国憲法は押しつけ憲法なのか

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こんにちは。いつもお越しくださる方も、初めての方もご訪問ありがとうございます。

今回は各政党の憲法改正諸案からの引用とそれについての個人的な考えをお話ししたいと思います。記事中には私個人の偏見や認識の誤りも含まれていると思います。その点のご理解のほど、よろしくお願いいたします。

学問・思想・宗教などについて触れていても、私自身がそれらを正しいと考えているわけではありません。

 

 

序文

twitterなどで押しつけ憲法は嘘であるという議論を非常に頻繁にみられますが、本当にそうなのでしょうか。私個人の意見として言っておかなければならないのは、私は日本国憲法および自民党憲法改正案について基本的にフリーメイソン憲法あるいは石工憲法という呼び方をしています。

フランス革命に秘密結社フリーメイソンが積極的に関与してきたことはこれまでも何度も触れてきました。人権思想はフリーメイソンが作り出した革命思想であり、日本国憲法自民党憲法改正案もこの枠組みを出ていません。自民党改正案は、現在のNWOにとってより都合のよい憲法に変えるという意味で日本国憲法よりも現在の体制寄りのものと見ていいと思います。

そして当然日本国憲法も現在の世界秩序の体制側にある憲法であるといって差し支えないと思います。憲法といいますと一般的には成文憲法のことを指しますが、本来的な意味は国体が語源であり、イギリスの不文憲法はこの国体にやや近い概念ではないかと思います。これまでも日本の自衛隊は中東などに派遣されていますが、これは日本国憲法下で派遣されたものであり、日本の現在の国体をもとに現憲法の解釈内で派遣されているといって差し支えありません。

現在の緊急事態における措置も当然ながら現憲法下で合憲とされているのは、基本的には現在の日本の国体、成文憲法の下部構造としての国体がそれを是としているのです。私たちは基本的人権の尊重という概念のもとで、自由の侵害がされているのですが、これは何も昨日今日始まったものではなく、フランス革命の頃からほとんど何も変わらず同じままです。

かのフランス革命では、聖職者ら刑務所内の囚人が虐殺され、正午から始まった虐殺が日をまたぐまで続きました。イギリスでの報道ではかれらジャコバン派やフランスの市民による残虐極まる行為はここでは紹介しませんが、私たちは人権の名のもとでさえ、普通に自由が侵害されるものであったということくらいは心に刻んでおくべきではないかと思います。

前置きが長くなりましたが、日本国憲法が本当に押しつけ憲法ではなかったのかどうかについては実際に日本の諸政党や研究機関による憲法案をみていく必要があると思います。ここでは自由党、進歩党、社会党共産党憲法研究会の憲法草案を見ていきたいと思います。

各政党の憲法改正諸案

各政党の憲法改正諸案 | 日本国憲法の誕生

日本共産党の新憲法の骨子

昭和20年11月11日
佐藤達夫文書 26(「政党その他の団体の憲法改正案」の内)
国立国会図書館
注記 当該資料は、当時の憲法問題調査委員会において配布された資料ではなく、後年に憲法制定関連の資料の一つとして作成されたものと思われる。11月8日の全国協議会で決議されたものには、第4項として「民主議会の議員は人民に責任を負ふ、選挙者に対して報告をなさず、その他不誠実不正の行為があった者は即時辞めさせる」とある。以下第5項から第7項の部分は、本資料中の第4項から第6項に該当する。(1945年11月12日付『朝日新聞』)

一、主権は人民に在り
二、民主議会は主権を管理す民主議会は一八歳以上の選挙権被選挙権の基礎に立つ、民主議会は政府を構成する人々を選挙する
三、政府は民主議会に責任を負ふ議会の決定を遂行しないか又はその遂行が不十分であるかは或は曲げた場合その他不正の行為あるものに対しては即時止めさせる
四、人民は政治的、経済的、社会的に自由であり且つ議会及び政府を監視し批判する自由を確保する
五、人民の生活権、労働権、教育される権利を具体的設備を以て保証する
六、階級的並びに民族的差別の根本的廃止

自由黨 憲法改正要綱

昭和21年1月21日
入江俊郎文書 9(「憲法問題調査委員会関係」の内)
国立国会図書館

一、天皇
一、統治権の主体は日本国家なり
二、天皇統治権の総攬者なり
三、天皇万世一系なり
四、天皇は法律上及政治上の責任なし
二、所謂大権事項
左の各項その他天皇の名に於てする国務は総て国務大臣の輔弼による
一、法律の裁可及公布
二、議会の召集、開会、閉会、停会及衆議院の解散
三、官吏の任免
四、外交
五、栄典の授与
六、恩赦
(註)現行憲法に於る緊急命令、執行命令、独立命令制定の大権官制大権、統帥大権、編制大権、戒厳大権、非常大権は之を廃止す
三、国民の権利
一、思想、言論、信教、学問、芸術の自由は法律を以てするも猥りに之を制限することを得ず
二、営業及勤労の自由は法律を以てするに非ざれば、之を制限することを得ず
三、私有財産及正当なる生活の安定を確保す
四、議会
一、議会は立法の府にして同時に行政を監督する機関とす
二、凡そ法規は議会の立法(法律)に依るを原則とす
三、第一院を衆議院、第二院を参議院とし其の組織は共に法律を以て之を定む
四、参議院は学識経験の活用と政治恒定の機関とす
五、衆議院が第一院として参議院に対する優越性を認むること概ね左の如し
(イ)衆議院の予算先議権の強化
(ロ)参議院衆議院を通過したる議案を修正若は否決したるときは、之を衆議院の再議に附し、三分の二以上の多数を以て再び之を可決したるときは、参議院の修正若は否決は其の効果を失ふ(之と関聯して衆議院を通過したる議案の参議院に於ける審議期間を制限す)
(ハ)参議院の内閣不信任上奏若は決議を禁止す
六、議会閉会中、各院毎に常置委員会を設け臨時議会を召集する暇なきとき、此委員会をして緊急命令に代る略式立法其の他議会の権限を暫定的に代行せしむ
七、議会は直接に行政各部及国民と交渉することを得
五、国務大臣及内閣
一、国務大臣及内閣に関しては憲法に掲ぐるものを除くの外、法律を以て其の基本的事項を定む
二、国務大臣の首班たる内閣総理大臣の他の国務大臣に対する地位の優越を明確にす
三、国務大臣の議会に対する責任を明確にす
四、内閣の制度を憲法中に規定し内閣に執行命令、独立命令、其の他の命令制定権を認む
六、枢密顧問
枢密顧問の制度は之を廃止す
七、裁判所及会計検査院
一、司法権の独立を強化し、大審院長を天皇に直隷せしむ
二、大審院長の下級裁判所に対する独立の監督権を確立す
三、別に検察庁を設け司法大臣の下に置く
四、行政裁判制度を廃止し之を司法裁判所に移管し、且行政訴訟事項を拡大す
五、会計検査院長天皇に直隷せしむ
六、大審院長及会計検査院長の任命は議会の議決を経ることを要す
八、憲法の改正
一、憲法改正の発案権は議会にもこれを認む

進歩黨 憲法改正要綱

昭和21年2月14日
入江俊郎文書 11(「憲法改正参考書類(憲法問題調査委員会資料)」の内)
国立国会図書館

一、統治権行使の原則
一、天皇は臣民の輔翼に依り憲法の条規に従ひ統治権を行ふ
立法は帝国議会の協賛に由り、行政は内閣の輔弼を要し、司法は裁判所に之を託す
二、委任立法並に独立命令は之を廃止す
三、緊急勅令の制定は議会常置委員会の議を経るを要す
四、宣戦、媾和、同盟条約、立法事項又は重大事項を含む条約の締結は帝国議会の議を経るを要す
五、統帥大権、編成大権及非常大権に関する条項は之を削除す
六、戒厳の宣告は帝国議会の議を経るを要す
七、内閣、各省其の他重要なる官制は法律に拠る
八、教育の制度に関する重要なる事項は法律に拠る
九、栄典大権中爵位の授与は之を廃止す
二、臣民の権利義務
十、日本臣民不法に逮捕、監禁せられたりとするときは裁判所に対し呼出を求め弁明を聴取せられんことを請願することを得
十一、日本臣民は自己を犯罪人たらしむべき告白を強要せらるることなし
十二、住所の不可侵、信書の秘密、信教、言論、著作、印行、集会、結社の自由の制限の法律は公安保持の為め必要なる場合に限り之を制定することを得
三、帝国議会
十三、貴族院を廃止し参議院を置く
参議院参議院法の定むる所に依り学識経験者及選挙に依る議員を以て之を組織す
十四、予算案及財政法案は衆議院に於て之を先議す
参議院衆議院に於て削減せる予算案の復活を決議することを得ず
十五、衆議院に於て引続き二回通過したる法案は参議院の同意なくして成立したるものと看做さる
十六、衆議院は内閣及各国務大臣に対し不信任又は弾劾を決議することを得
十七、帝国議会の会期を五箇月とす
衆議院は会期の延長並に臨時議会の召集を求むることを得
十八、議会常置委員会を設く
常置委員会は議会閉会中緊急勅令の制定、臨時議会召集の請求緊急財政処分、予備金の支出、暫定予算、其の他緊急実施を要する重要事項を議決す此等の議決は次の帝国議会の承認を要す常置委員は衆議院議員任期満了及衆議院解散の場合に於ても新議会成立迄其の資格を存続す
四、国務大臣
十九、天皇内閣総理大臣を親任せんとするときは両院議長に諮問す
国務大臣の親任は内閣総理大臣の奏薦に依る
内閣総理大臣国務大臣を以て内閣を組織す
二十、内閣総理大臣国務大臣帝国議会に対し其の責に任ず
二十一、枢密院は之を廃止す
五、司法
二十二、大審院最高裁判所とす大審院は法律又は命令が違憲又は違法なりやを審査するの権を有す
二十三、行政裁判所を廃止しその権限を裁判所の管轄に属せしむ
六、会計
二十四、総予算不成立の場合には前年度予算の月額範囲内に於て三箇月限り暫定予算を作成す、暫定予算は常置委員会の承認を要す
政府は三箇月の期間内に新予算の成立し得るやう帝国議会を召集することを要す
七、補則
二十五、各議院は各其の現在議員の三分の二以上の同意を以て憲法改正案を発議することを得

社会黨 憲法改正要綱

昭和21年2月24日発表
入江俊郎文書 11(「憲法改正参考書類(憲法問題調査委員会資料)」の内)
国立国会図書館

憲法制定の三基準
一、方針 新憲法を制定して民主主義政治の確立と、社会主義経済の断行を明示す
二、方法 総選挙後の特別議会においては特に会期を延長し、新憲法制定に当ることとす、これを憲法議会とす
三、目標 平和国家を建設するを目標とするを以て、従来の権力国家観を一掃し、国家は国民の福利増進を図る主体たることを明かにす
主権と統治権
一、主権 主権は国家(天皇を含む国民協同体)に在り
二、統治権 統治権は之を分割し、主要部を議会に、一部を天皇に帰属(天皇大権大幅制限)せしめ、天皇制を存置す
天皇統治権の内容
一、内閣総理大臣は両院議長の推薦に基き、天皇之を任命す、但し、天皇之を拒否するを得ず
二、条約締結は議会の権能に属し天皇之に署名す但し天皇之を拒否するを得ず
三、議会に於て議決せる法律の公布には天皇之に署名するの形式を経ることとす
四、内閣の申出に基き天皇は恩赦を為すの権を有す
五、天皇は国民に栄典授与の権を有す
六、天皇は外国に対し儀礼的に国家を代表するの権を有す
七、天皇は政治上の責任なし尚皇位の継承は議会の承認を得るを要す、摂政を置くには議会の議決による
議会
一、議会は天皇大権に属せざる他の一切の統治権を行使す
二、議会の権能は立法権、歳入歳出予算承認の権、行政に関する指示及監督権、条約締結に承認を与ふるの権を有す
三、議会は二院より成る、衆議院比例代表による国民公選の議員より成り参議院に優先す、参議院は各種職業団体よりの公選議員を以て構成し専門的審議に当る
四、衆議院において二回可決せられたる法律案は参議院を拘束す
五、議会は無休とす、休会の際は代行機関をおく
六、議会は国民投票により解散されるの途を開く
国民の権利義務
一、国民は生存権を有す、その老後の生活は国の保護を受く
二、正義公平の原則に基き、国民生活の安定向上を図るは国の使命なり、そのために必要なる政策を実施す
三、国民は一切平等なり、特別身分による総ての差別を撤廃す
四、華族、位階、勲等を総て廃止す
五、言論、集会、結社、出版、信仰、通信の自由を確保す
六、国民は労働の義務を有す、労働力は国の特別の保護を受く
七、所有権は公共の福利のために制限せらる
八、国民の家庭生活は保護せらる、婚姻は男女の同等の権利を有することを基本とす
九、公民は法の定むる所により其の機能に応じ均しく公職に就くことを得
十、就学は国民の義務なり、国は教育普及の施設をなし、文化向上の助成をなすべし
内閣
一、内閣総理大臣は各省大臣、国務大臣を任命す、各大臣を以て内閣を構成す
二、内閣は議会に対し責任を負ふ内閣は議会の委託により外に対し国を代表し、行政権を執行し官吏を任免し法律執行命令を発す
三、国民投票により内閣の不信任を問はるることあり、尚枢密院は之を廃止す
司法
一、司法権は独立し裁判所之を行ふ、裁判所は法律の定むる裁判官を以て構成す
二、大審院長、大審院判事、検事総長は両院議長の推薦に基き、内閣之を任命し、他の裁判官は内閣直接に任命す
三、無罪の判決を受けたる者に対しては国家補償の途を確立す
四、死刑は之を廃止す、人権尊重の裁判制度を樹立すべし
五、行政裁判所は之を廃止す
予算、決算
一、国の歳出歳入は詳細に予算に規定し、各会計年度の開始前に法律を以て之を定むべし
二、国の歳出歳入の決算は速に会計検査院に提出し、その検査を経たる後議会に提出すべし、会計検査院長は両院議長の推薦に基き内閣之を任命す
附則
憲法を改正せんとする時は議員三分の二以上の出席及び出席議員の半数以上の同意あるを要す

日本共産黨の日本人民共和國憲法(草案)

1946年6月29日発表
憲法調査会資料(西沢哲四郎旧蔵)42(「憲資・総第10号 帝国憲法改正諸案及び関係文書(二)-政党その他の憲法改正案」の内)
国立国会図書館
注記 当該資料は、憲法調査会の資料として昭和32年翻刻刊行されたもの。6月29日発表当時のものには、当該の表題は付されておらず、「日本共産党憲法草案」となっている。(1946年7月15日付『アカハタ』)

前文
第一章 日本人民共和国
第二章 人民の基本的権利と義務
第三章 国会
第四章 政府
第五章 国家財政
第六章 地方制度
第七章 司法
第八章 公務員
第九章 憲法改正
前文
天皇制支配体制によつてもたらされたものは、無謀な帝国主義侵略戦争、人類の生命と財産の大規模な破壊、人民大衆の悲惨にみちた窮乏と飢餓とであつた。この天皇制は欽定憲法によつて法制化されてゐた様に、天皇が絶対権力を握り人民の権利を徹底的に剥奪した。それは特権身分である天皇を頂点として、軍閥と官僚によつて武装され、資本家地主のための搾取と抑圧の体制として、勤労人民に君臨し、政治的には奴隷的無権利状態を、経済的には植民地的に低い生活水準を、文化的には蒙昧と偏見と迷信と盲従とを強制し、無限の苦痛をあたへてきた。これに反対する人民の声は、死と牢獄とをもつて威嚇され弾圧された。この専制的政治制度は日本民族の自由と福祉とに決定的に相反する。同時にそれは近隣植民地・半植民地諸国の解放にたいする最大の障害であつた。
われらは苦難の現実を通じて、このやうな汚辱と苦痛にみちた専制政治を廃棄し、人民に主権をおく民主主義的制度を建設することが急務であると確信する。この方向こそかつて天皇制のもとにひとしく呻吟してきた日本の人民と近隣諸国人民との相互の自由と繁栄にもとづく友愛を決定的に強めるものである。
ここにわれらは、人民の間から選ばれた代表を通じて人民のための政治が行はれるところの人民共和政体の採択を宣言し、この憲法を決定するものである。天皇制はそれがどんな形をとらうとも、人民の民主主義体制とは絶対に相容れない。天皇制の廃止、寄生地主的土地所有制の廃絶と財閥的独占資本の解体、基本的人権の確立、人民の政治的自由の保障、人民の経済的福祉の擁護――これらに基調をおく本憲法こそ、日本人民の民主主義的発展と幸福の真の保障となるものである。日本人民の圧倒的多数を占める勤労人民大衆を基盤とするこの人民的民主主義体制だけが帝国主義者のくはだてる専制抑圧政治の復活と侵略戦争への野望とを防止し、人民の窮極的解放への道を確実にする。それは人民の民主的祖国としての日本の独立を完成させ、われらの国は国際社会に名誉ある当然の位置を占めるだらう。日本人民はこの憲法に導かれつつ、政治的恐怖と経済的窮乏と文化的貧困からの完全な解放をめざし、全世界の民主主義的な平和愛好国家との恒久の親睦をかため、世界の平和、人類の無限の向上のために、高邁な正義と人道を守りぬくことを誓ふものである。
第一章 日本人民共和国
第一条 日本国は人民共和制国家である。
第二条 日本人民共和国の主権は人民にある。主権は憲法に則つて行使される。
第三条 日本人民共和国の政治は人民の自由な意志にもとづいて選出される議会を基礎として運営される。
第四条 日本人民共和国の経済は封建的寄生的土地所有制の廃止、財閥的独占資本の解体、重要企業ならびに金融機関の人民共和政府による民主主義的規制にもとづき、人民生活の安定と向上とを目的として運営される。
第五条 日本人民共和国はすべての平和愛好諸国と緊密に協力し、民主主義的国際平和機構に参加し、どんな侵略戦争をも支持せず、またこれに参加しない。
第二章 人民の基本的権利と義務
第六条 日本人民共和国のすべての人民は法律の前に平等であり、すべての基本的権利を享有する。
第七条 この憲法の保障する基本的人権は不可侵の権利であつて、これを犯す法律を制定し、命令を発することはできない。
政府が憲法によつて保障された基本的人権を侵害する行為をなし、またかやうな命令を発した場合は人民はこれに服従する義務を負はない。
第八条 人民は日本人民共和国の法律と自己の良心以外にはどんな権威またはどんな特定の個人にたいしても服従または尊敬を強要されることはない。人種、民族、性別、信教、身分または門地による政治的経済的または社会的特権はすべて廃止され今後設置されえない。皇族、華族の制度はこれを廃止する。称号、勲章その他の栄典はどんな特権をも伴はない。かやうな栄典の授与はあたへられた者にたいしてのみ効力をもつ。
第九条 人民は民主主義的な一切の言論、出版、集合、結社の自由をもち、労働争議および示威行進の完全な自由を認められる。
この権利を保障するために民主主義的政党ならびに大衆団体にたいし印刷所、用紙、公共建築物、通信手段その他この権利を行使するために必要な物質的条件を提供する。
民主主義的大衆団体の国際的聯繋の自由は保障され助成される。
第十条 人民に信仰と良心の自由を保障するため宗教と国家、宗教と学校は分離され、宗教的礼拝、布教の自由とともに反宗教的宣伝の自由もまた保障される。
第十一条 人民は居住、移転、国外への移住、国籍の離脱ならびに職業選択の自由をもつ。
第十二条 人民の住宅の不可侵と通信の秘密は法律によつて保護される。
十三条 人民は身体の不可侵を保障され、何人も裁判所の決定または検事の同意なしには逮捕拘禁されることはない。
公務員による拷問および残虐な行為は絶対に禁止される。
第十四条 何人も裁判所で裁判を受ける権利を奪はれず、裁判は迅速公平でなければならない。
第十五条 人民を抑留、拘禁した場合、当該機関は例外なく即時家族もしくは本人の指名する個人に通知しなければならない。また本人の要求があれば拘束の理由は直ちに本人および弁護人の出席する公開の法廷で明示されなくてはならない。
第十六条 何人も自己に不利益な供述をすることを強要されない。強制、拷問または脅迫のもとでの自白もしくは不当に長期にわたる抑留または拘禁の後の自白は、これを証拠とすることはできない。何人も自己に不利益な自白だけによつては有罪とされず、または刑罰を科せられない。
第十七条 被告人はどんな場合にも弁護の権利を保障され、事件の資料について精通する権利と法廷において自国語で陳述する権利とを保障される。
第十八条 どんな行為もあらかじめ法律によつてこれにたいする罰則を定めたものでなければ刑罰を科せられない。刑罰は犯罪の重要さに応じて科せられる。何人も同一の行為のために二度処罰されることはない。
第十九条 死刑はこれを廃止する。
第二十条 国家は裁判の結果無罪の宣告をうけた被告人にたいしては精神上、物質上の損害を賠償しなければならない。
第二十一条 受刑者の取扱ひは人道的でなければならない。受刑者の労賃と労働時間は一般企業の労働条件を基準として決定される。
女子の被拘禁者にたいしては特にその生理的特性にもとづく給養を保障し、妊娠、分娩の際には衛生的処置を保障しなければならない。
第二十二条 刑罰は受刑者の共和国市民としての社会的再教育を目的とする。受刑者にたいして合法的に科された刑罰を更に加重するやうな取扱を行つた公務員はその責任を問はれる。
第二十三条 受刑者を含む被拘禁者にたいして進歩的民主主義的出版物の看読を禁止することはできない。
第二十四条 勤労にもとづく財産および市民としての生活に必要な財産の使用・受益・処分は法律によつて保障され、その財産は相続を認められる。社会的生産手段の所有は公共の福祉に従属する。財産権は公共の福祉のために必要な場合には法律によつて制限される。
第二十五条 人民は性別を問はずすべての国家機関の公務員に選任される権利をもつ。
第二十六条 人民は個人または団体の利害に関しすべての公共機関に口頭または文書で請願または要求を提出する権利をもつ。何人もこの請願または要求をしたためにどんな差別待遇もうけることはない。
第二十七条 女子は法律的・経済的・社会的および文化的諸分野で男子と完全に平等の権利をもつ。
第二十八条 婚姻は両性の合意によつてのみ成立しかつ男女が平等の権利をもつ完全な一夫一婦を基本とし純潔な家族生活の建設を目的とする。社会生活において家長および男子の専横を可能とする非民主的な戸主制ならびに家督相続制はこれを廃止する。夫婦ならびに親族生活において女子にたいする圧迫と無権利とをもたらす法律はすべて廃止される。
第二十九条 寡婦およびすべての生児の生活と権利は国家および公共団体によつて十分に保護される。
第三十条 人民は労働の権利をもつ。すなはち労働の質と量にふさはしい支払をうける仕事につく権利をもつ。この権利は民主主義的経済政策にもとづく失業の防止、奴隷的雇傭関係および労働条件の排除、同一労働に対する同一賃銀の原則、生活費を基準とする最低賃銀制の設定によつて現実に確保され、労働法規によつて保障される。
第三十一条 勤労者の団結権、団体交渉・団体協約その他団体行動をする権利は保障される。被傭者は企業の経営に参加する権利をもつ。
第三十二条 労働の期間および条件は労働者の健康、人格的威厳または家庭生活を破壊するものであつてはならない。十八歳以下の未成年者はその身心の発達を阻害する労働にたいして保護され、十六歳以下の幼少年労働は禁止される。
第三十三条 人民は休息の権利をもつ。この権利は一週四十時間労働制、一週一日・一年二週間以上の有給休暇制、休養のための諸施設ならびに労働諸法規によつて保障される。
第三十四条 勤労婦人は国家および雇主からその生理的特性にたいする配慮をうけ、産前産後の有給休暇、母子健康相談所、産院、保育所等の設備によつてその労働と休息の権利を保障される。
第三十五条 人民は老年、疾病、労働災害その他労働能力の喪失および失業の場合に物質的保障をうける権利をもつ。この権利は国家または雇主の負担による労働災害予防設備、社会保険制度の発展、無料施療をはじめとする広汎な療養施設によつて保障される。
第三十六条 家のない人民は国家から住宅を保障される権利をもつ。この権利は国家による新住宅の大量建設、遊休大建築物、大邸宅の開放、借家人の保護によつて保障される。
第三十七条 すべての人民は教育をうけ技能を獲得する機会を保障される。初等および中等学校の教育は義務制とし、費用は全額国庫負担とする。上級学校での就学には一定条件の国庫負担制を実施する。
企業家はその経営の便宜のために被傭者の就学を妨げることはできない。
第三十八条 日本人民共和国は人民の科学的研究、芸術的創造の自由を保障し、人民のあらゆる才能と創意の発展を期し、研究所、実験所、専門的教育機関、文化芸術諸施設を広汎に設置する。
第三十九条 日本人民共和国は民主主義的活動、民族解放運動、学術的活動のゆゑに追究される外国人にたいして国内避難権を与へる。
第四十条 日本人民共和国に居住する外国人の必要な権利は法律によつて保障される。
第四十一条 人民は日本人民共和国の憲法を遵守し、法律を履行し、社会的義務を励行し、共同生活の諸規則に準拠する義務をもつ。
第三章 国会
第四十二条 日本人民共和国の最高の国家機関は国会である。
第四十三条 国会は主権を管理し人民にたいして責任を負ふ。
第四十四条 国会はつぎの事項を管掌する。
一 内外国政に関する基本方策の決定
二 憲法の実行の監視
三 憲法の変更または修正
四 法律の制定
五 予算案の審議と確認
六 政府首席の任免と首席による政府員の任免の確認
七 国会常任幹事会の選挙、国会休会中において常任幹事会の発布した諸法規の確認
八 人民から提出された請願書の裁決
九 日本人民共和国最高検事局検事の任命
十 会計検査院長の任命
十一 各種専門委員会の設置
第四十五条 国会は法律の定める定員数からなる代議員によつて構成される一院制議会である。
第四十六条 日本人民共和国の立法権は国会だけがこれを行使する。
第四十七条 代議員として選挙され、かつ代議員を選挙する資格は、政治上の権利を有する十八歳以上のすべての男女に与へられる。選挙権、被選挙権は定住、資産、信教、性別、民族、教育その他の社会的条件によるどんな差別、制限をも加へられない。
第四十八条 代議員の選挙は比例代表制にもとづき平等、直接、秘密、普通選挙によつて行はれる。
第四十九条 代議員はその選挙区の選挙民にたいして報告の義務を負ふ。選挙民は法律の規定に従つて代議員を召還することができる。
第五十条 国会は四年の任期をもつて選挙される。
第五十一条 国会は代議員の資格を審議する資格審査委員会を選挙する。国会は資格審査委員会の提議により個々の代議員の資格の承認または選挙の無効を決定する。
第五十二条 国会は必要と認めた場合にはすべての問題に関して査問委員会および検査委員会を任命する。すべての機関および公務員はこれらの委員会の要求に応じて必要な資料と書類を提供する義務を持つ。
第五十三条 国会の会期は年二回を原則とする。臨時国会は国会常任幹事会の決定および代議員三分の二以上の要求によつて召集される。
第五十四条 国会は代議員数の三分の二以上の出席によつて成立する。
第五十五条 法律は国会において代議員の単純多数決によつて成立し、国会常任幹事会議長および書記の署名をもつて公布される。
第五十六条 国会における議事はすべて公開とする。
第五十七条 国会は議長一名、副議長二名を選挙し、議事の進行、国会内の秩序の維持にあたらせる。
第五十八条 代議員は国会の同意がなくては逮捕されない。国会の休会中は国会常任幹事会の承認を必要とし次期国会の同意を要する。
第五十九条 国会には代議員の三分の二以上の決議にもとづき解散を告示する権限がある。
第六十条 国会の任期が満了するかまたは国会が解散された場合には、四十日以内に総選挙が施行される。
第六十一条 総選挙施行後三十日以内に前国会常任幹事会は新国会を召集する。
第六十二条 国会は二十五名の国会常任幹事会を選挙する。
第六十三条 国会常任幹事会は議長および副議長各一名を選挙し、議長は日本人民共和国を代表する。
第六十四条 国会常任幹事会はつぎの事項を管掌する。
一 国会の召集および解散、総選挙施行の公告
二 国会休会中政府首席による政府員の任免の確認 ただしこれについては国会の事後確認を必要とする
三 国会の決定による人民投票の施行の公告
四 政府の決定および命令のうち法律に合致しないものの廃止
五 赦免権の行使
六 国際条約の批准
七 外国における日本人民共和国全権代表の任命および召還
八 日本駐剳外国代表者の信任状および解任状の受理
九 民主的栄典の授与
第六十五条 国会の任期が満了するかまたは国会が解散された場合には、国会常任幹事会は新たに選挙された国会によつて、新国会常任幹事会が選出されるまでこの権限を保持する。
第四章 政府
第六十六条 政府は日本人民共和国の最高の行政機関である。政府首席は国会によつて任命され、首席の指名にもとづき国会の承認をえた政府員とともに政府を構成する。
第六十七条 政府は国会にたいして責任を負ひ、国会の休会中は国会常任幹事会にたいして責任を負ふ。各政府員は政府の一般政策について全体的に、個人的行動については個人的に責任を問はれる。
第六十八条 国会が政府にたいする不信任案を採択した場合には政府は総辞職する。
第六十九条 政府は次の事項を管掌する。
一 一般的中央行政事務の遂行のために現行諸法規にもとづいて決定又は命令を発布し、かつその執行を検査すること
二 各省およびその管轄下にある国家の諸機関を統一的に指導すること
三 日本人民共和国の発展、公共の秩序の維持および基本的人権の保障のために必要な諸措置の施行
四 各省に附属する特別委員会または事務局の組織
五 対外関係の一般的指導
六 政府の権限に関する問題につき各省の訓令または指令もしくは地方議会の決定または命令で国法に合致しないものの取消
第七十条 政府の命令は日本人民共和国の全領域にわたつて施行される。
政府の命令の公布には当該政府員の署名と首席の副署とを必要とする。
第五章 国会財政
第七十一条 国家財政の処理には国会の議決を必要とする。
第七十二条 租税の賦課および徴収は変更されない限り一年を限つて効力をもつ。消費税はこれを廃止する。
第七十三条 国費の支出または国家債務の負担は国会の議決を経るを必要とする。
第七十四条 政府は毎会計年度の予算を作成し、国会の審議をうけ承認をえなければならない。事業計画については政府は毎年事業計画書を作成し、国会に提出しなければならない。
第七十五条 国家財政の決算はすべて毎年会計検査院の検査をうけ、政府は次年度にその検査報告とともにこれを国会に提出しなければならない。
会計検査院長は国会によつて任命され、職務の遂行につき国会に責任を負ふ。
会計検査院の組織と権限は法律によつて定められる。
第六章 地方制度
第七十六条 日本人民共和国はその領土内に、地方制度(村、町、市、県等)を認める。地方制度は法律にもとづいて運営される。
第七十七条 地方制度は第四十七条、第四十八条を基準とする選挙法によつて選挙される地方議会(村会、町会、市会、県会等)を基礎として運営される。
第七十八条 各級の地方議会はそれぞれの行政機関を選任する。行政機関はそれぞれの地方議会ならびに上級機関に責任を負ふ。
第七十九条 各級の地方議会はそれぞれの行政機関の活動を統轄し地方予算を審議、確認し、法律の範囲内において地方的問題を議決しまたは命令を発布する。
第八十条 政府機関の地方支部の活動は地方の権力機関の行政と合致するやう法律によつて調整される。
第七章 司法
第八十一条 日本人民共和国における裁判は人民の基本的権利の尊重を根本精神とし、人民の名により最高裁判所地方裁判所、地区裁判所によつて行はれる。
第八十二条 裁判はこれを公開しその審理には陪審員の参加が必要である。
第八十三条 日本人民共和国の最高裁判機関は最高裁判所である。
第八十四条 最高裁判所の裁判官は国会の推薦にもとづき人民の信任投票によつて五年の任期をもつて選任される。
第八十五条 各下級裁判所の裁判官はそれぞれ地方の議会の推薦にもとづきそれぞれの地域の人民の信任投票によつて四年の任期をもつて選任される。
第八十六条 裁判官は独立的であり法律にのみ服従する。
第八十七条 検事の任務は人民が法律を正確に遵守するのを監督するにある。
第八十八条 最高検事局の検事は五年の任期をもつて国会により任命される。
第八十九条 下級検事局の検事は最高検事局の検事の確認を経て上級検事局がこれを任命する。
第九十条 検事局機関は、最高検事局の検事にだけ服従し、一切の地方機関から独立してその職務を行ふ。
第八章 公務員
第九十一条 公務員は民主主義と全人民の利益に奉仕し官僚主義に陥つてはならない。
第九十二条 公務員は廉潔を旨とし、一切の汚辱行為、職権濫用行為をすることを厳禁される。
国家は公務員およびその家族に必要な生活手段を保障する。
第九十三条 行政機関の公務員のうち議会によつて任免されるもの以外はその行政機関の長が任免する。
第九十四条 人民は公務員の罷免を議会その他の公共機関に要求する権利をもつ。
第九十五条 議会は公務員の活動を監視し、議会の確認によつて執行機関の長が任免する公務員にたいしても罷免を要求する権利をもつ。
第九十六条 警察署の責任者はその署の管轄区域内の人民によつて選出され、警察制度が官僚的支配機構として固着することを阻止する。
第九章 憲法改正
第九十七条 日本人民共和国憲法の改正発案権は国会に属する。
第九十八条 日本人民共和国の地方上級議会は、代議員の三分の二以上の同意をもつて憲法改正の提案権をもつ。
第九十九条 日本人民共和国の憲法の改正は、国会代議員の三分の二以上の出席によつて開会される国会において、三分の二以上の多数をもつて採択されねばならない。
第百条 日本人民共和国の共和政体の破棄および特権的身分制度の復活は憲法改正の対象となりえない。

憲法草案要綱 憲法研究會案

[1945年12月26日発表] 資料番号 入江俊郎文書 11(「憲法改正参考書類(憲法問題調査委員会資料)」の内)
国立国会図書館

憲法研究会案

高野岩三郎馬場恒吾杉森孝次郎、森戸辰男、岩淵辰雄、室伏高信、鈴木安蔵
根本原則(統治権
一、日本国ノ統治権ハ日本国民ヨリ発ス
一、天皇ハ国政ヲ親ラセス国政ノ一切ノ最高責任者ハ内閣トス
一、天皇ハ国民ノ委任ニヨリ専ラ国家的儀礼ヲ司ル
一、天皇ノ即位ハ議会ノ承認ヲ経ルモノトス
一、摂政ヲ置クハ議会ノ議決ニヨル
国民権利義務
一、国民ハ法律ノ前ニ平等ニシテ出生又ハ身分ニ基ク一切ノ差別ハ之ヲ廃止ス
一、爵位勲章其ノ他ノ栄典ハ総テ廃止ス
一、国民ノ言論学術芸術宗教ノ自由ニ妨ケル如何ナル法令ヲモ発布スルヲ得ス
一、国民ハ拷問ヲ加へラルルコトナシ
一、国民ハ国民請願国民発案及国民表決ノ権利ヲ有ス
一、国民ハ労働ノ義務ヲ有ス
一、国民ハ労働ニ従事シ其ノ労働ニ対シテ報酬ヲ受クルノ権利ヲ有ス
一、国民ハ健康ニシテ文化的水準ノ生活ヲ営ム権利ヲ有ス
一、国民ハ休息ノ権利ヲ有ス国家ハ最高八時間労働ノ実施勤労者ニ対スル有給休暇制療養所社交教養機関ノ完備ヲナスヘシ
一、国民ハ老年疾病其ノ他ノ事情ニヨリ労働不能ニ陥リタル場合生活ヲ保証サル権利ヲ有ス
一、男女ハ公的並私的ニ完全ニ平等ノ権利ヲ享有ス
一、民族人種ニヨル差別ヲ禁ス
一、国民ハ民主主義並平和思想ニ基ク人格完成社会道徳確立諸民族トノ協同ニ努ムルノ義務ヲ有ス
議会
一、議会ハ立法権ヲ掌握ス法律ヲ議決シ歳入及歳出予算ヲ承認シ行政ニ関スル準則ヲ定メ及其ノ執行ヲ監督ス条約ニシテ立法事項ニ関スルモノハ其ノ承認ヲ得ルヲ要ス
一、議会ハ二院ヨリ成ル
一、第一院ハ全国一区ノ大選挙区制ニヨリ満二十歳以上ノ男女平等直接秘密選挙(比例代表ノ主義)ニヨリテ満二十歳以上ノ者ヨリ公選セラレタル議員ヲ以テ組織サレ其ノ権限ハ第二院ニ優先ス
一、第二院ハ各種職業並其ノ中ノ階層ヨリ公選セラレタル満二十歳以上ノ議員ヲ以テ組織サル
一、第一院ニ於テ二度可決サレタル一切ノ法律案ハ第二院ニ於テ否決スルヲ得ス
一、議会ハ無休トス
ソノ休会スル場合ハ常任委員会ソノ職責ヲ代行ス
一、議会ノ会議ハ公開ス秘密会ヲ廃ス
一、議会ハ議長並書記官長ヲ選出ス
一、議会ハ憲法違反其ノ他重大ナル過失ノ廉ニヨリ大臣並官吏ニ対スル公訴ヲ提起スルヲ得之カ審理ノ為ニ国事裁判所ヲ設ク
一、議会ハ国民投票ニヨリテ解散ヲ可決サレタルトキハ直チニ解散スヘシ
一、国民投票ニヨリ議会ノ決議ヲ無効ナラシムルニハ有権者過半数カ投票ニ参加セル場合ナルヲ要ス
内閣
一、総理大臣ハ両院議長ノ推薦ニヨリテ決ス
各省大臣国務大臣ハ総理大臣任命ス
一、内閣ハ外ニ対シテ国ヲ代表ス
一、内閣ハ議会ニ対シ連帯責任ヲ負フ其ノ職ニ在ルニハ議会ノ信任アルコトヲ要ス
一、国民投票ニヨリテ不信任ヲ決議サレタルトキハ内閣ハ其ノ職ヲ去ルヘシ
一、内閣ハ官吏ヲ任免ス
一、内閣ハ国民ノ名ニ於テ恩赦権ヲ行フ
一、内閣ハ法律ヲ執行スル為ニ命令ヲ発ス
司法
一、司法権ハ国民ノ名ニヨリ裁判所構成法及陪審法ノ定ムル所ニヨリ裁判之ヲ行フ
一、裁判官ハ独立ニシテ唯法律ニノミ服ス
一、大審院ハ最高ノ司法機関ニシテ一切ノ下級司法機関ヲ監督ス
大審院長ハ公選トス国事裁判所長ヲ兼ヌ
大審院判事ハ第二院議長ノ推薦ニヨリ第二院ノ承認ヲ経テ就任ス
一、行政裁判所検事総長ハ公選トス
一、検察官ハ行政機関ヨリ独立ス
一、無罪ノ判決ヲ受ケタル者ニ対スル国家補償ハ遺憾ナキヲ期スヘシ
会計及財政
一、国ノ歳出歳入ハ各会計年度毎ニ詳細明確ニ予算ニ規定シ会計年度ノ開始前ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
一、事業会計ニ就テハ毎年事業計画書ヲ提出シ議会ノ承認ヲ経ヘシ
特別会計ハ唯事業会計ニ就テノミ之ヲ設クルヲ得
一、租税ヲ課シ税率ヲ変更スルハ一年毎ニ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
一、国債其ノ他予算ニ定メタルモノヲ除ク外国庫ノ負担トナルヘキ契約ハ一年毎ニ議会ノ承認ヲ経ヘシ
一、皇室費ハ一年毎ニ議会ノ承認ヲ経ヘシ
一、予算ハ先ツ第一院ニ提出スヘシ其ノ承認ヲ経タル項目及金額ニ就テハ第二院之ヲ否決スルヲ得ス
一、租税ノ賦課ハ公正ナルヘシ苟モ消費税ヲ偏重シテ国民ニ過重ノ負担ヲ負ハシムルヲ禁ス
一、歳入歳出ノ決算ハ速ニ会計検査院ニ提出シ其ノ検査ヲ経タル後之ヲ次ノ会計年度ニ議会ニ提出シ政府ノ責任解除ヲ求ムヘシ
会計検査院ノ組織及権限ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
会計検査院長ハ公選トス
経済
一、経済生活ハ国民各自ヲシテ人間ニ値スヘキ健全ナル生活ヲ為サシムルヲ目的トシ正義進歩平等ノ原則ニ適合スルヲ要ス
各人ノ私有並経済上ノ自由ハ此ノ限界内ニ於テ保障サル
所有権ハ同時ニ公共ノ権利ニ役立ツヘキ義務ヲ要ス
一、土地ノ分配及利用ハ総テノ国民ニ健康ナル生活ヲ保障シ得ル如ク為サルヘシ
寄生的土地所有並封建的小作料ハ禁止ス
一、精神的労作著作者発明家芸術家ノ権利ハ保護セラルヘシ
一、労働者其ノ他一切ノ勤労者ノ労働条件改善ノ為ノ結社並運動ノ自由ハ保障セラルヘシ
之ヲ制限又ハ妨害スル法令契約及処置ハ総テ禁止ス
補則
一、憲法ハ立法ニヨリ改正ス但シ議員ノ三分ノ二以上ノ出席及出席議員ノ半数以上ノ同意アルヲ要ス
国民請願ニ基キ国民投票ヲ以テ憲法ノ改正ヲ決スル場合ニ於テハ有権者過半数ノ同意アルコトヲ要ス
一、此ノ憲法ノ規定並精神ニ反スル一切ノ法令及制度ハ直チニ廃止ス
一、皇室典範ハ議会ノ議ヲ経テ定ムルヲ要ス
一、此ノ憲法公布後遅クモ十年以内ニ国民授票ニヨル新憲法ノ制定ヲナスヘシ

感想

憲法研究会含めて基本的人権という概念を用いていないことは着目すべきところでしょう。基本的人権という概念を用いているのは共産党だけであり、共産党フリーメイソンが作り出した秘密結社であったことを思えば当然と言えるでしょう。

GHQ共産党と同じく基本的人権という概念を用いたのは、GHQ内部に日本を共産化したいと考えていた勢力がいたということの証左であり、当時のGHQは現在のアメリカ同様に、反共勢力と親共勢力とに分かれていました。ケーディスら親共勢力が憲法制定に深く関与していたために、日本国憲法憲法研究会すら言及しなかった基本的人権という概念を取り入れ、さらにGHQ共産党すらも認めなかった一切の戦力を放棄することを決定しました。

平和主義をうたっていることと戦力の放棄は同義ではありませんが、これを同じ意味と見做したい人はいるでしょう。世界中の国家は表面的には平和主義国家です。あなたが敵視し、野蛮な国家とみなしている国でさえも表面上は平和主義です。鬼畜な敵を倒すためにやむなく戦力を保持しているという建前であり、繰り返しますが、すべての国家は基本的には表面上は平和主義なのです。平和主義と戦力の放棄は意味が異なり、当然、憲法研究会もそれを明記していません。

それでは共産党GHQを見比べるとどうでしょう。共産党は民族解放の闘いを行う各国を支援しようと考えていましたが、当然GHQの答えはノーとなります。アメリカの支配層にとって民族解放などとんでもない話であり、日本を含め、アジア・アフリカ諸国の安い労働力が必要だったわけで、もちろん日本国憲法には反映されません。この点に関しては共産党大日本帝国の方がGHQとの関係よりも近かったのではないかと推測します。

GHQは日本人が提案したものの中から占領政策にとって使えそうな項目を抜き出して、さらによりGHQが日本を属国化するための項目を付け加えることで、適度に日本人の認識を反映させることで日本国民の反逆を抑制し、さらに要所をしっかりと抑えることで自分たちにとって都合のよい状況へと導くことに成功したといえるでしょう。

これをして日本国憲法が日本人によって作られた憲法だと言われれば、きっとそのように言っている人は、これまで家族や国家の言う通りに生きることが自分の意志であるとして生きてきた人たちなのだと邪推したくなります。

日本国憲法下で存在しない大量破壊兵器を名目にイラク政府を転覆したことを彼らは忘れているのでしょうか。成文憲法(コンスティテューション)よりも、より確固とした戦後体制、戦後日本の国体こそが、実際上の日本の国体(コンスティテューション)だということを肝に銘じておくべきなのではないかと思います。

日本国憲法も、自民党憲法改正案も基本的には新世界秩序建設を目指すアメリカの勢力が生み出した、属国憲法・属国憲法案であるという議論をしてもよさそうに思うのですがいかがでしょうか。

押しつけ憲法なんかではないという主張をなさる方は、この憲法のもとでアメリカの侵略戦争自衛隊が無理やり加担させられてきたことについてなぜ何もいわないのでしょうか。日本はこれからも平和憲法の名のもとに各国に自衛隊を派遣しつづけることでしょう。これに対して憲法違反だと言っても、それは表面的な成文憲法しか見ておらず、成文憲法の奥底にある国体としての日本国憲法、押し付けられ憲法にいつまでも目を閉ざし、自分を欺き続けているからであるということをなのではないかと思います。

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