秘密結社とブランキ主義

見出し画像

今回は浅野研真の著作『インターナショナル発達史』(大正14[1925]年)の>第二章 インターナショナル前史 >4 ブランキの運動 を紹介します。一部現代語調に直しています。

 

 

ブランキの運動

1834年以来、フランスにおけるすべての共和主義運動は、秘密結社によってなされる所となった。しかし結社そのものの中においては、運動の精神は当然に一段の進歩をなし、プロレタリアートの利益と希望とが重んぜられ、その目的とするところもまた、単なる共和主義のみにとどまらずして、経済上の平等の原則にまで拡大され、バブーフのいわゆる平等のための暴動の精神が復活するにいたった。

これより先、バブーフの友ブオナローティは、バブーフの乱に与してスイスに追放されていたが、1828年ブリュッセルにおいて、『バブーフのいわゆる平等のための陰謀について』(Conspiration pour l'Égalite, dite de Babeuf)二巻を著し、大いにバブーフ主義を鼓吹した。しかして、これを実際の運動の方面に導いたものはバルべ(Armand Barbès)およびブランキの2人であった。

彼らは最初『家族結社』(Société des Familles)を作って、バブーフ主義を実際運動の上に表現しようと努力したが、1835年、官憲によって解散を命じられるにおよび、さらに姿を変えて、『季節結社』(Les sociétés secrètes)を作り、パンフレットやビラなどを発行して、盛んに社会革命と政治的暗殺とを奨励していたが、1839年5月にいたって、1796年5月にバブーフによってなされたのと同じ計画をもってクーデターを起こしたが、12、13の両日にわたって鎮定され、バルベとブランキの2人は死刑の宣告を終身入獄に軽減されて、1848年の2月革命にはじめて出獄した。

1833年に『人権結社』 Société des droits de l'hommeが設立され、その後、1834年に『復讐者の結社』Société des vengeurs、『家族結社』、35年に『季節結社』となったようです。

ブランキは、その生涯の中、27年を牢獄に送った人で、彼の徒党は、1839年以後も秘密の連絡を失わず、自ら『労働者』または『平等人』と称していた。ブランキ主義は今なお、フランス社会主義中の極左的急進分子を呼ぶに用いられている。

ブランキの反乱は、苦もなく鎮圧されたが、その時の結社は、亡命ドイツ人の中、後に述べる所の『義人同盟』に属していた若干の人々が参加していたことは、注意されるべき事であって、共産主義同盟の母体たる義人同盟が、既にこの当時において、フランスの秘密結社と事を共にしていたことが、これによっても知られる。

『義人同盟』Bund der Gerechtenは、正義者同盟とも訳されます。義人同盟はフィリッポ・ブオナローティの抗争に基づく『追放者同盟』Bund der Geächtetenの分派の一つが1836年に結成された義人同盟になります。著名な指導者にはヴィルヘルム・ヴァイトリング、ブルーノ・バウアーなどがいました。後にカール・マルクスも参加し、その後、義人同盟は1847年にロンドン大会でエンゲルスブリュッセルで開設した『共産主義通信委員会』Kommunistisches Korrespondenz-Komiteeと合併して、共産主義者同盟Bund der Kommunistenになりました。

ブルーノ・バウアーの1843年の著作『ユダヤ人問題』は、カール・マルクスの『ユダヤ人問題によせて』によって批判されます。

【個人的見解】

ブランキは1834年に、彼の発行する新聞Le Libérateurの中で新聞に「団結、平等、友愛」をモットーとしていると書いています。ブランキの思想はあまりはっきりしない部分もありますが、少数精鋭によって革命を起こし専制的な独裁体制を構築することという点は様々な資料から見られます。日本にある資料からは、「少数精鋭の「秘密結社」による革命」という表現が目立ちます。

実際にブランキ主義は秘密結社によって革命を実現させようとしているという点では明らかに正しいと思われます。

また、ブランキ主義は、マルクス主義が成立するために必要な条件であると考えられているのではないかという推論も可能なのではないかとも思います。

戦後日本はマルクス主義が礼賛された時代と捉えることもできるでしょう。これは同時に裏面でブランキ主義の存在があるのではないかと個人的には思うわけです。

日本共産党はかつて秘密結社として活動していましたが、そういった極左社会主義のみならず、今日のリベラルや保守と呼ばれる思想も、実はブランキ主義の影響下にあると捉えるのが案外に普通のことなのではないかという気がします。

自民党による政治も、民主党による政治も、どこか裏で口裏合わせしたような、統一性を帯びています。何か知らない組織の計画や陰謀に沿って政策が決定しているのではないかとも思えるわけです。

ここで敢えて陰謀というのは、ブオナローティの著作、『バブーフのいわゆる平等のための陰謀について』という著作から、本人たちが既にそれを認めているという意味です。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。