可謬論者――プラグマティストによる分析

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これまで様々な議題について論じてきましたが、私自身の思想信条についてある程度公表する必要性を感じています。

海外では自分の宗教的な立場を明確にすることは一般的なことですが、日本の場合、自分の宗教的な立場などについて曖昧な状態である場合が多いのではないかと思います。

 

 

私は可謬論者です

私自身は自分をアブラハムの宗教の信者であると思ってないですし、仏教の信者であるとも思っていません。私が言えることはせいぜい日本語話者であるということと、可謬論者であるというくらいです。

恐らく自分自身を可謬論者だと認識している人はほとんどいないと思います。多くの人にとっては聞きなれない言葉でしょう。これが明確に、一般的な日本人や海外の方々と違う立場なのかもしれません。私は可謬論者であるという立場が一番強い立場になります。

可謬論者というのは英語でFallibilistといい、信念が真実であると保証し、正当化できるような信念、あるいは絶対に確かである信念は、そもそも存在しないと考える立場です。

すべての科学的な主張は、暫定的な結論であり、新しい証拠が提示された時に修正される余地が生まれるわけです。そしてその修正された主張もまた暫定的な結論として修正される余地を残しています。

私はプラグマティストと言えるかもしれません

このような主張を行ったはアメリカの哲学者のチャールズ・サンダース・パースであり、彼はプラグマティズムというものを提唱しました。私はある意味でプラグマティストという立場になります。

可謬主義者の特徴は基礎づけ主義と呼ばれる立場と大きく対立します。基礎づけ主義は英語でFoundationalismといいます。

デカルトやロックに見られるような基礎づけ主義を古典的基礎づけ主義といいます。デカルトは人間の感覚に疑いの目を挟み、「邪悪な悪魔」に騙されている可能性を指摘しました。このため懐疑論に陥ることを避けるために彼は幾何学の力を借りました。

フランスの哲学者デカルト幾何学によって確立されたものから真実を見出そうとしました。そして全ての信念に疑問を差し挟んだうえで、「われ思う、ゆえにわれあり」という結論に到達します。デカルトにとってこれこそが知識の基礎として確かなものであり、邪悪な悪魔に騙されずに済むと考えました。

デカルトスピノザといった大陸の哲学者は自明である公理をよりどころにして公理システムを開発しました。一方イギリスの哲学者は観察をよりどころにしてイギリス経験論を確立します。

ドイツのイマヌエル・カントはこれらの二つの潮流を統合することでドイツ観念論の流れを作りましたが、初期の近代哲学の哲学者の多くが基礎づけ主義の立場でした。それぞれ各々に微妙な立ち位置や感覚の違いはありましたが、どれも基礎づけ主義的であったのは間違いないでしょう。

歴史的に基礎づけ主義への攻撃が始まるのはアメリカでプラグマティズムが提唱されたあたりからです。

宗教に対しては可謬論者という立場から解釈する

どのような宗教を信じていますか?と訊ねられたとしたら、私は特定の宗教を信じているわけではなく、全ての宗教を可謬論者としての立場として、分析し、解釈しているだけであると答えるかもしれません。例えば、私にとって神は「信じるか信じないかの対象」ではそもそもありません。

いわゆる陰謀論などについても基本的には可謬論者としての立場から解釈します。もちろん、自分が正しく陰謀論分析できているなどと考えてはいませんが、できる限りで、確からしい信念を見出したいというだけです。

自分の信念が確かだという証明がそもそも存在しないという立場ですので、特に、自分の説が絶対的に正しいとも、他人の説が間違いなく正しいとも、基本的には思いません。

陰謀論と可謬論

世の中にあふれる陰謀論には様々な立場があると思いますが、その多くが基礎づけ主義に基づいています。私が知る限りでも、彼ら自身の理想や現実についての自分の信念の基礎にあるものについて言いますと、共産主義的な立場や、サタニストの立場、スピリチュアルの立場など様々です。あるいはカトリックの立場やプロテスタントの立場などの様々な宗教的な立場もあります。

私にはこのような立場が皆無とは言えませんが、比較するとそれほど大したものではないと思います。ある意味で、基礎づけ主義的な陰謀論は、共産主義、サタニズム、スピリチュアリズム、あるいはキリスト教徒としての信念の正当化のために利用している側面すらあります。

これは同時に反陰謀論の立場についても言えるのではないかと思います。自分のリベラルな、あるいは保守的な立場を正当化するために陰謀論を利用している可能性も否定できません。

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